アルゼンチンの国債がデフォルトの危機にあるようだ(以下、数値の出典は週間エコノミスト7/15号)現在、6月末の召還だった8億ドル分の国債利払いができず、30日間の猶予期間となっている。主な債権者であるアメリカの投資ファンドと交渉中ということだ。
これを乗り切ったとしても、今年と来年に償還期限を迎える長期債は220億ドル、短期債が190億ドルもある一方、アルゼンチンの外貨準備は290億ドルしかなく、厳しい状況なようだ。
日本の国債は円建てなので、返済がやばくなっても金を刷って返済すれば問題ない(債権者には大問題だが)。しかしアルゼンチンの国債は(比率は発表されていないが)大半が自国通貨=ペソ建てでは無いはずだ。なぜならアルゼンチンは2002年に大規模なデフォルトをおこしており、それ以前も何度も債務不履行を起こしてきた「前科者国家」だからだ⇒
世界のデフォルト国家一覧表。通貨としての信用力が皆無なので、アルゼンチンペソ建ての国債など誰も買わないから、大半が米ドル建ての債務だと思われる。
つまり、短期債と長期債の合計410億米ドル分の返済は、大半が米ドル建てと思われ、外貨準備が290億ドルしかない現状、デフォルトリスクは極めて高いと予想できる。
ではアルゼンチンがデフォルトすると、世界の株式市場にどれほどの影響が及ぶのかという考察に入ろう。エコノミスト誌では、経済的結びつきの大きいブラジルへの影響が大きいと解説している。実体経済的にはその通りだが、それ以上に警戒すべきは、
アルゼンチンが世界金融危機のトリガーとなるリスクだ。アルゼンチンがデフォルトを起こせば、前述の米国投資ファンドが損失を被るから、その補填のため(及びリスク体勢を上げるため)他の金融商品を投げ売ってくる可能性があることだ。
特に、数年前から危機状態にあるギリシャやスペインの国債が売り浴びせられる危険性がある。このように金融危機が膨らんでくると、
本来アルゼンチン国債との関連性などゼロなはずの中国のシャドーバンキング関係(理財商品)のデフォルトに発展する可能性もゼロではない。シャドーバンキングは中国国内だけで完結した問題だが、理財商品を発行する親会社(中国の大手金融機関)は、中国国外でも営業を行っているし、海外資産への出資・投資枠もある訳だ。彼らが国外で不良債権を抱えて財務が悪化することになると、理財商品の尻拭いが出来なくなる。
そうなれば、中国政府が公的資金で庇うしかなくなるが、状況次第ではシャドーバンキングへの投資家を切り捨てることも十分あり得るだろう(損害を被るのは一部の富裕層だけなので)。しかし、中国金融市場が混乱に陥り、実体経済に悪影響が及ぶことも必死であり、最終的には「人民元の切り下げ」という、我々海外投資家にとって最悪のシナリオが発動するリスクも否定できない。
文字だけ見たらずいぶん飛躍してるように思えるだろうが、現実としてギリシャも中国も、いつ破綻してもおかしくない状況なのよね。
むしろさっさと破綻してくれて膿を吐き出してくれた方が、投資家としては有り難い。てことで、アルゼンチン政府にはどうせ延命は無理なのだから、今までのようにさっさとデフォルトしてくれることを望みたい。